暖かな日差しが降り注ぐ外と世界を切り離すかのように、その部屋は締め切られていた。
明るい色のカーテンも楠んで見えるような室内の、その窓辺に同じ髪色をした男女が二人。
「あのね…」
決心からか諦めからか、小さく溜め息を吐くと、彼女は静かに口を開いた。
まるで、幼子に語りかけるのに似たそれに、眉がぴくりとつり上がるのを意識する。
全く、年上はどちらだと思ってるんだい。
母親を真似たような口振りの彼女を神威は黙って見つめた。
「何で此処に兄ちゃんが居るアルか」
「逢いたいから来たんだヨ。あと前の彼女に家を追い出されたから」
にっこりとした笑みを浮かべて、恐らく相手が神楽でなかったら惚れていたような声色で(特に前半を)神威は言った。
付け足したされたような、後半の理由が神楽の眉を寄せる。
そうやって表情がすぐに顔に出る妹を見る目が、兄妹間のようなものでないことくらい神威はとうに気づいている。
「いや、そうじゃなくて!此処は銀魂高校の寮ネ!なのに何で他校の兄ちゃんが居るアルか!」
とうとう堪忍袋の緒でも切れたのか、神楽はその小さな口を目一杯開いて神威に怒鳴り散らした。
それをも貼り付けたような笑みをしたまま神威は受け止める。
怒りをぶちまけても表情をひとつとして変えない神威に、神楽の眉間の皺は更に深くなる。
「だからそれはさっき言ったでしょ。それよりさ…」
先の言葉を喉の奥に潜めたまま、神威はグイと妹の腕を引っ張り胸の中に納めた。
ドンドンと胸を叩く小さな手をやんわりと制止し握り締め、神威は背中を抱き締める腕にぎゅうと力を込めた。
やがて諦めたのか、静かになった妹の髪をとかし始めた兄の手は何処か愉悦に富んでいる。
「一緒に帰ってきた男、誰?」
「っ!?」
大人しく、神威にされるがままになる妹に神威はにこにこと尋ねる。
耳元に兄の口があるせいか、その質問がやけに囁くように言われたのは気のせいだろうか。
むず痒い感覚に神楽は身を捩った。
逃げ出そうとする猫を押さえ付けるように、神威は更に力を込める。
「ねぇ、誰?」
「み、見てたアルか?」
彼女が憧れて止まない蒼天と同じ色をした(いや、それよりも綺麗な瑠璃の)瞳が、同じ色をした兄のそれをじっと見据えた。
眉を下げて見上げられ、神威は内心参る(表情になんて出してやらないが)。
これで計算してないものなんだから質が悪い。
心情を誤魔化すように、背中をとんとんと軽く叩いてやると、神楽の背中に絡めた腕が皺を作る。
小さい頃からこれ好きだったねと言うと腕のなかの彼女は小さく頷いた。
それに神威は満足して笑みを一層深くする。(それは恐ろしいくらい綺麗に)
「神楽ァ、早く言わないと止めちゃうよ」
「やーヨ。兄ちゃん、ソーゴに喧嘩売りに行くでショ」
「ふーん、名前で呼んでるんだ」
しまった、と神威の言葉に神楽が暴れる。
男の腕の中で、それは皆無にも等しかったが。
日本に留学する日、あのハゲが買ってきた瓶底眼鏡を真面目に掛けていってしまう妹の瑠璃色が微かに潤み始めてくる。
彼女なりに我慢してるんだろう、己の掌と重なる小さな手がぎゅうと握り締める。
「駄目ヨ、兄ちゃん。喧嘩売っちゃ」
「えー」
「えー、じゃないアル!」
それで何回しょぴかれたと思ってるんだ。
眉をしかめ、声色に怒りを滲ませる彼女なんか、なんら怖くなどない。
寧ろ、それさえも可愛く映るんだから自分はそうとう重症だろう。
「別に、喧嘩しに行くんじゃ無いヨ」
「へ?」
「神楽に手を出させないように、成敗しに行くだけ」
そう言えば簡単に頬を染める(しかし眉はすぐにしかめた)妹を強く抱き締め、抗議の声を殺した。
その細い首筋に残された紅い跡に、気付かないとでも思ったのかい?
そんなことされたら、
「今日は兄ちゃんと仲良くしようね、神楽」
「っ!!!」
ほらほらそんなに暴れないで。
離してなどあげないんだから。
モドル
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